9月定例会で提案したマイナ保険証に係るものです。こちらは陳情がいくつか提出されてもいますが、我が会派以外からは意見書として取り上げようという動きがありませんでした。意見書の内容は、
国が進めている、マイナンバーカードに健康保険証機能を組み込んだいわゆる「マイナ保険証」の普及のため2024年秋から従来型健康保険証を原則廃止するとしていることに対して、市民の理解を促進してもらって従来型健康保険証の原則廃止への不安払拭について最大限努めることと、従来型健康保険証の原則廃止への不安払拭がなされ一定の理解が得られるまでの間は、従来型の健康保険証の併用も認めることを国に求めるものです。
国が進めている、マイナンバーカードの健康保険証利用を加速するために、顔認証付きカードリーダの医療機関・薬局への無償提供など、スムーズな移行への対応策が整えられています。正直言えば、ほぼ強制的に行われているこの取組は、医療機関にとっては現時点ではあまりメリットがあるわけでもなく迷惑な話でしかないかもしれません。すでに、本年4月からは医療機関に対してオンライン資格確認等の導入が原則として義務付けられています。電子カルテの標準化なども進められており、これまで行われてこなかった広域連携を視野にした取り組みも進められています。この、オンライン資格確認等のシステム導入によって、医療機関や薬局にとっては、患者等の直近の資格情報等が確認できるようになることで事務コストが削減できたりしますし、市民にとっては医療機関や薬局が特定健診等の情報や診療/薬剤情報を閲覧できるようになることで、よりよい医療を受ける環境が整えられるなどのメリットもあります。
具体的には、体調が悪くなって病院を受診したとします。その際に、直近の健康診断のデータが電子カルテ上に表示されたり、別の医療機関にかかっていた際の診療情報が患者の同意のもとで、医師が確認できることになります。そうすると、受診した病院の医師は、最初から不調の原因を想定するのではなく、一定の情報の下で診療を行うことができます。加えて、処方された薬の履歴がわかることから、より適切な薬の選択も行うことができるようになります。さらに、将来的には別の医療機関でMRIなどを撮影してもらったりしたものもデータ連携してみることができるようになるなどが目指されています。すでに大分県の臼杵市などで取り組まれてきた医療連携の仕組みを国全体として出来る部分を取り組むことで、医療自体の質の向上を目指そうとしているこの取組に欠かせないのが、実は電子空間での本人確認になります。結局は、私たちは自分を自分と証明するために、これまではアナログな方法で済ませてきました。しかし、様々なことがICTを使ってできるようになったのと同時に、アナログな本人確認の方法だけでは信用できなくなってしまいました。それを公的な面で解決するために用いられるようになったのがマイナンバーカードです。これ以外の方法で本人を証明することは危険すぎてできません。従来型の健康保険証で、各医療機関等の情報連携を行うことはリスクでしかありません。つまり、今後の医療連携等を進めるか進めないかの選択肢が突きつけられている状況です。そして、少子高齢社会、人口減少社会を迎え、無制限な医療の提供は難しく、効率化が求められてもいる現状では、医療の世界を一歩先へ進めるしかありません。マイナンバーカードの健康保険証分野への活用は今後のためには必須なものです。
しかし、昨今マイナンバーカードをめぐるトラブルとして、マイナ保険証に別人の個人番号が誤登録されているケースが8,000件以上あったことが明らかとなり、マイナ保険証に対する国民の不安が広がっていることも事実です。これだけ大規模なシステムを運用する段階で、ミスを100%無くすことは難しいと思います。特に、ミスが起こりやすいのは人が関わる部分です。今が、生みの苦しみであり、しっかりと取り組んでいただくしかありません。
私自身は、医師会の方々とも議論をしながら海老名市として同様の仕組みを作っていってはどうかという議論があったため一定の理解もしています。厚生労働省の方を呼んで説明していただいたり、審議会を傍聴したりして勉強もしました。コロナ前から議論されていたものでもあります。しかし、議員の中でもなかなか理解が難しい分野でもあり、合意も得にくいということはありした。今回、9月定例会最終日の上程ではありましたが、提案にあたっては9月はじめに案文を作成して、議員に配布して意見を聴いていました。にもかかわらず、提案時には質疑もありました。特段、回答準備はしていませんでしたので適切な回答になっていたかは疑問ですが、私の方から回答はさせていただきました。
一定の理解とは何を指すのかとの質疑がありました。それは、一般的な用語としてどうとるかしかありません。意見書は国の機関に提出する際に、提出者が説明に行くわけではありません。書かれていることを、そのまま受け取って読み、内容を理解して対応を決定するだけです。つまり、一定という言葉が持つ意味が、提案者の理解通りに理解されるのではなく、一般的な用語として理解されるだけです。加えて、共産党のようにマイナ保険証云々の前にマイナンバーカード自体に反対している団体が明確にいます。とすれば、国民の理解という表現は、全ての国民の理解と受け取られかねず、意見書の内容の実現がほぼ不可能と判断されかねないものになってしまいます。そこで、加えたものが一定という言葉になります。
また、マイナ保険証と健康保険証の併用を継続することであれば、全ての議員の合意が得られたがなぜそうしなかったのかという質疑もありました。そう思うのであれば、自分で提案するべき内容だと思いますが、全ての議員は、その内容で合意得られるものではありません。そんな単純な話ではありません。医療機関にとっては、マイナ保険証の導入は大変なものではありますが、導入されるのであれば、全てがマイナ保険証である方が当然対応は楽になります。今は、混在しているから大変なのです。システム移行期の混乱を併用を続けることで長引かせる危険性が高いと思います。
そして、最後に討論では、色々な理屈を並べていましたが、結局、多くの議員が合意できるのは、少なくとも一定の理解が得られるまでは従来の健康保険証を廃止しないで欲しい。期日を決めて廃止するようなものではない。ちゃんと不安払拭に全力を挙げて欲しい。という点だったのだと思います。であれば、不安が払しょくされない間は、健康保険証の廃止をするなというメッセージも含めることができています。
意見書に反対するということは、仮に口頭でどんな綺麗ごとを言っていても、現状を肯定すること以外にはどんなメッセージを出すこともできていません。議会に認められた権限のひとつである意見書提出権があるにもかかわらず市民の声を何も届けられていません。
幸い、そういった議員は少数にとどまっていて、意見書自体は採決されていますので、国に対してメッセージを送ることは出来ました。これまで届けてきた意見書の内容に沿って国が動いていることも、いくつか出てきています。もちろん海老名市議会だけではなく、様々な議会や市長会、団体からの声が届いているということもあるかと思いますが、これからもしっかりと議会の権限を使って意見を届けていきます。